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弟を守るためなら、地獄へ行くことなどどうってことないと高をくくっていた。
弟を失うことより恐ろしいことなどないと、そう思い込んでいた。
散々悪魔に「地獄をなめるな」と脅されたって、そんなのは屁でもなかった。
なのに・・・・
俺は地獄に堕ちたことを心底後悔した。
助けてくれと、永遠とも言える長い時間、
何度も何度も地獄の底から叫び続け、そして・・・・
眩いくらいの光に包まれたかと思うと、躰の呪縛が解かれ、とてつもない力に引っ張られたように思えた。
そして次に来たのは息苦しさ。
これには覚えがある。
永遠に続く痛みではない、生きるための、苦しさだ。
圧迫される苦しさから逃れようと懸命に土をかき分ける。
外にあるであろう、新鮮な空気を求めて。
ようやく地上にたどり着けばそこは懐かしい大地が広がっていた。
真っ暗な世界ではない、明るい世界。
しかし、瞬時に悟る。
何故、俺は蘇ったのか?一体誰が?どうやって?
思い当たるのはただ一つ。
そして、俺は其処へ向けて歩き出した。
聞けば、俺が地獄に堕ちてから4ヶ月という月日が流れていたらしい。
地獄での時間はそんなものじゃなかったが、俺はあえて口にしなかった。
地獄での出来事など思い出したくもない。
口にするのすら禍々しい。
だから、誰に聞かれようと「覚えていない」の一点張りで貫き通した。
久しぶりの再会は感慨深いものだった。
もう二度と会えないと思っていたはずの彼らにまた会えたことは奇跡に等しい。
固く抱きしめ合ってこの身に彼らの温もりを感じることで生き返った実感を抱けた。
けれど、喜んでばかりもいられない。
浮かび来る数々の疑問を俺はぶつけた。
しかし、彼らは俺が生き返った理由をもってはいなかった。
確かに生き返らそうと数々の手段を試みてはみたものの、どれ一つ上手くはいかなかったと。
辛辣な瞳で言われれば、信じるより他ない。
では誰が?何の目的で?
・・・彼らでないのなら、悪魔か?
確かめる手段が一つあると、ボビーの提案に乗ることにした。
彼女の名前はパメラ。ボビーの古き良き友人であり、霊媒師でもある彼女の力を借りて俺を助けたものの誰かを知ろうとよるものだった。
けれどそれが仇となり、彼女は目を失うことになってしまった。
”カスティエル”
彼女が目と引き換えに唯一知った手掛かり。
やはり悪魔なのだろうか・・・
しかし、途中であった悪魔達も何故生き返ったのか分からない素振りをみせた。
そしてこちらが、脅しをかければ無抵抗のまま素直に殴られたりまでしてみせた。
一体どういう事なのかさっぱり分からない。
悪魔でないなら全く見当がつかない。
しかし何者かがつきまとってる感じは墓から這い出たときからずっとしていた。
これ以上、振り回されるのはごめんこうむる。
自分が儀式をしようとするのをしれば、サムはきっと傷つくとそう思っていた。
だが、それ以上のことをサムはしていたのを俺はまだ知らない。
呼び出したはいいものの、まさかこれほどのものだとは。
まさかそんな存在が実際にいるとは。
天使など・・・・神など・・・
そんなもの・・・・信じるものか。
救いのものが存在するなら何故今まで助けてくれなかった?
罪なき人々を悪魔の手から救ってくれなかった?
助けられる価値なんて俺にはない。
助けてくれと何度も叫んだが、それでも俺は戻ってはならない存在だったのだから。
もう遅いのだ、何もかもが遅すぎた。
俺は、地獄にいるべきだった。
いるべきだった。
助けられてはならなかった。