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抱きしめた躰から力が抜けていくのが分かる。
胸に当たる鼓動を感じない。
もう彼は死んだのだと思い知らされた。
まだ温もりはあるのに、眠っているだけのように見えるのに。
それは本当にただの“みえる”だけなのだ。
ディーン、どうして
僕を置いていくのか、僕をこの世界にただひとり残して
基地に連れ帰り、彼の躯を横たえた。
本当なら焼かなければならないのだろう。
このままにしておいてもただ邪な誰かに利用されるだけ。
わかっていても心が追いつかない。
大切な家族を失ってどうして冷静でいられるだろう。
しばらく傷ついたディーンの姿をぼんやりと眺めていた。
どのくらいそうしていただろう、ふと目に付いたのはカインの刻印。
その瞬間、怒りがこみ上げた。
ああそうだ。誰のせいで、こうなった?ディーンが死んだのはあいつのせいじゃないか!」
思えば居ても立ってもいられず部屋を飛び出した。
決着をつけなければならない。
落とし前を必ずつけてやる!
ディーンを殺した罪は死をもって償わせる!
そう心に決めて、クラウリーを呼び出す呪文を唱える。
何度も何度も何度も何度も!
なのにただの一度もクラウリーは応じなかった。
途方に暮れ、ほかの悪魔を呼び出そうと試みても誰ひとり姿を現さない。
当然だ、地獄の王が応じるなと命令してるんだろう。
ふらつく足でディーンの元へ戻った。
しかしそこにあるべき姿が全く消え失せていた。
「え?ディーン・・・!?」
先程までいただろうに、その痕跡が一切を残して消えていた。
残っていたのは一枚の紙切れ。
“俺のことは放っておけ”
ただそう一言、けれど確かにディーンの筆跡で書かれていた。
何が起こっているのか初めは理解できなかった。
死んでいなかったのかと思ったが、ならこんな書置きを残して消えるはずがない。
自分の前から何も言わずに去るわけがない。
確かに彼は死んだのだ。
兄が自分の下から去る理由をこの時はまだ予想だにしていなかった。
ディーンが悪魔になったなんて
来る日も来る日もディーンを探し続けた。
危ない橋を何度も渡って、探し続けて。
そして見たんだ。
彼の瞳が真っ黒に染まるのを。